同棲を始め、結婚を意識するようになった頃。
窓から見える空き地で、大きな工事が始まった。
夜勤明けの疲れた週末。
工事の騒音が、確実に睡眠を妨げ始めた。
文句を言うつもりはなかった。
ただ、何を作っているのかだけは確認しておこう。
そう思って入ったのが、人生で初めてのモデルルームだった。
文句どころか、雰囲気に圧倒された。
衝動的だったかもしれない。
でも、頭の中にはすでに「結婚」という文字が浮かんでいて、
購入することに不思議と迷いはなかった。
後日、彼女を連れてもう一度話を聞き、
まもなく両親を交えての話し合いになった。
順番は少し違ったけれど、
「結婚したら?」という親の言葉も、素直に受け入れられた。
親への信頼は絶大だったし、
仕事も忙しいながら順調、収入面の不安もなかった。
正直に言えば、
どのみち一人では管理しきれない。
残念だけど、自分にはパートナーが必要だと思った。
迷う余地は、1ミリもなかった。
2860万円というローンも、
彼女がいれば問題ない。
そう思えたことで、安心して決断できた。
この時は、まだ気づいていなかった。
結婚と住宅購入は、
生活を安定させる選択だと思っていた。
でも実際には、
それは毎月のお金の流れそのものを固定する決断だった。
住居費。
維持管理費。
税金。
住宅ローン。
それらは単なる「支出」ではなく、
人生に組み込まれた前提条件になっていった。
今考えると、
マンションは「買って終わり」ではない。
修繕も、管理も、税金も、金利も。
すべてが、買った瞬間から
毎月の前提になっていった。
当時の自分は、
ほとんど何も知らず、何も調べずに決めていた。
思考はいたってシンプルだった。
「家賃はもったいない。
どうせ払うなら、自分のマンションのローンに払ったほうがいい」
その後、住宅ローン控除の期間が終わり、
金利上昇とともに、借り換えという作業が待っていた。
購入してよかったのかと聞かれれば、
娘が二人になり、手狭さは否めないが、
それでも「よかった」と思っている。
その理由は、また別の機会に書こうと思う。
ただ、今なら一つ、はっきり言える。
2860万円は、安かった。
資産として見れば、今もそう思う。
ただしそれは、
「自由だった頃の自分」にとっての話ではない。
結婚と住宅購入は、
お金を資産に変えた選択であると同時に、
人生の可動域を、静かに固定する決断でもあった。
ここでまた一つ。
人生に「動かなくても済む理由」が増えた。
結婚と住宅購入は、
未来を守る選択であると同時に、
思考を止める材料にもなり得る。
この時は、まだ気づいていなかった。
未完成。だから進む。
また明日、進もう。

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